「死ぬ」ではなぬ「死む」?
子育て中のパパママさんは、子どもが「死ぬ」という言葉を言い始めたとき、どうしますか?
我が家では先日、4歳の息子が「スイカの種食べたら、死むよ?」と言いました。子どもの口から「死」なんて言葉が出てきたら、「ぎょっ」とする人が多いのではないでしょうか。「『死ぬ』なんて、言うんじゃありません!」と言ってしまうパパママさんもいるかもしれませんね。
かく言う私も「ぎょっ」とはしましたが、私の場合は息子が「死ぬ」ではなく「死む」と言っていたことに感動を覚えてしまいました。
『ちいさい言語学者の冒険』
みなさんは『ちいさい言語学者の冒険』という本をご存知ですか?この本の表紙に書いてあるんです。「これ食べたら、死む?」と。
これは、子どもが日本語を習得していく過程で起こすエラーです。「読む」「飲む」と同じように「死む」と使うのです。これまで習得した言葉から、「きっと『死む』と活用するのだろう」と仮説を立てて、使ってみる。そして、大人から直されたり、大人の言葉を聞いたりして修正していくのです。
ですから、「ああ、この子は一生懸命言葉の法則を、例外を掴もうとしているんだな」と感じて感動してしまったのです。
本に掲載のクイズを子供に出題!
そして、久しぶりに先程の本を引っ張り出してきて、この本に書いてあったクイズを子供にやってみました。「『た』にテンテンをつけたら何になる?」と聞くと「だ」。「『さ』にテンテンをつけたら何になる?」と聞くと「ざ」。「『は』にテンテンをつけたら何になる?」と聞くと「gea」(「げ」と「が」の中間音)。
これまた感動。
なぜ?
なぜって?「た(ta)」と「だ(da)」、「さ(sa)」と「ざ(za)」は、調音点(口の中で音を作る場所)が同じなのです。でも、「は(ha)」と「ば(ba)」は全然別のところなんです。「は(ha)」は声門摩擦音といって、喉で作る音なんです。それに対して「ば(ba)」は両唇破裂音といって、上と下の唇を合わせて作る音なんです。
清音と濁音の関係を、子どもは音声学の知識なんてなくても分かっているんですね。
宇宙語
子どもが言葉を覚えていく過程は本当に素晴らしく、尊いものです。
「あや、ふーしぇ、ふっふっふーん(日本語訳:左へ曲がります。ご注意ください。ピピ ピピー)」というような、元の言葉と一つも共通点がない宇宙語から始まり、失敗を恐れずにトライ&エラーを繰り返し、大人と会話が成立するまでになるのです。
子どもは遊んでいるだけで、何の努力もしていないように見えるけれど、彼らの頭の中では言語学者もビックリの実験と検証が日々繰り返されているのです。
子供の言葉を聞いてみよう!
忙しかったり疲れていたりすると、つい「そーだねー」と分かったふりで相槌を打ってしまったり、「何言ってるか分からないよ。」と突き放してしまったりすることもありますが(ダメな母ですみません)、大人の反応は子どもの言語習得に多大な影響を与えていますから、改めて子どもの言葉に対する実験と検証にしっかり付き合っていこうと思いました。
この本、オススメです!
言語習得中のお子さんがいるパパママさんは、是非この本を読んでみてください。そして、お子さんの話す言葉に耳を傾けてみてください。お子さんは尊敬すべき言語学者かもしれません。
ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密 (岩波科学ライブラリー) 広瀬友紀
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